風水害 日頃の備えは…

ここ数年、各地で相次ぐ水害が、今年また起きないとも限らない。だが、備えを怠らなければ、被害を最小限に食い止めることができる。地震など、他の自然災害への備えにもつながる。きょうから始めよう。

(1)ハザードマップ

防災の第一歩は、自然災害の危険性が地域にどの程度あるかを知ることにある。まずするべきなのは、自治体が作成するハザードマップを見ることだ。

被害が及ぶ範囲を地図上で示している。洪水、土砂災害、火山、津波などのバージョンがある。例えば、洪水ハザードマップでは、近くの河川が氾濫した場合、どのくらいの水深まで浸水する恐れがあるかが分かる。土砂災害ハザードマップでは、崖崩れや土石流などで被害が出る可能性がある区域を示している。

冊子があるほか、自治体のホームページで公開されている。目の前のスマートフォンやパソコンなどから、今すぐにでも確認できる。

(2)災害用備蓄

「用意するのが面倒だ」。災害に備え、備蓄が重要だと感じても、二の足を踏む人も多いのでは。

乾パンなど、特別なものを用意する必要はない。日頃食べている食品や使っている物を多めに買い置いておくだけで、立派な備蓄だ。「日常備蓄」という。その上で、食べたり使ったりしたら新たに買い足す「ローリングストック(回転備蓄)」を取り入れれば、負担感も少ない。

3日分程度、できれば1週間分の備蓄が推奨されている。

(3)家族との連絡方法

災害時は、携帯電話やインターネットがつながりにくくなる。離れた家族の安否確認には、複数の連絡手段を持っておくことが大切だ。

国が呼びかけるのは、災害用伝言ダイヤル「171」の利用。「無事です。ケガはありません」などとメッセージを録音すれば、家族が聞くことができる。携帯会社が開設する「災害用伝言板」や、無料通信アプリ「LINE」など、連絡方法は増えたが、見直されているのが公衆電話だ。災害時でも比較的通じやすい。使い方を子どもに教えておこう。

(4)マイ・タイムライン

水害の危険が迫った時、スムーズに避難行動に移れるだろうか。いつ避難を開始するかなど、一人一人の行動計画をあらかじめ時系列で決めておく「マイ・タイムライン」が注目されている。

洪水発生の危険性がある3日前から計画。気象や行政の情報発表に合わせ、どのタイミングで避難時の持ち物を準備するか、高齢者を避難させるかなどを決めておく。

「3階でも浸水の恐れ」荒川・中川沿いを歩く

大規模水害が危惧される東京都の東部5区の一つ、江戸川区の住宅地を専門家と共に歩いてみた。

「3階建てでも安全とは言えません」。近くを荒川と中川が並走する同区松島地区。土手の上から、戸建て住宅がひしめく街を見下ろし、リバーフロント研究所技術参与の土屋信行さんは表情を曇らせる。「土手の高さが住宅の2階部分。決壊したら3階の床まで浸水する」。同区の元土木部長で、「水害列島」「首都水没」などの著書がある。


写真説明:中川や荒川がすぐ脇を流れる東京都江戸川区の住宅地を見下ろす土屋さん(左)。「同様に危険な地域は全国各地にある」

同区は、1947年のカスリーン台風や49年のキティ台風でも多くの建物が浸水した。その後、地下水のくみ上げで地盤は沈下しており、河川氾濫や高潮が発生すれば、2週間以上の浸水が続く恐れもあると予想されている。地元の町内会は堤防機能の強化を国や都に要望しており、土屋さんは「多くの住民が避難できる公園の整備など、土地の高台化を進めるべきだ」と訴える。

現状では、近くの学校の上階に避難する方法があるが、収容人数は限られる。地域は高齢者も多く、住民の伊東春海さん(85)は「足腰が弱く、避難もままならない」と危機感を募らせる。「いち早く広域避難を開始するしかない」と土屋さん。

日本は国土面積の約1割の洪水氾濫区域に、約5割の人口と4分の3の資産が集中する。「都市の拡大とともに、河川沿いに多くの人が暮らすようになった街は各地にある。全国的な問題だ」と訴えた。

 

(読売新聞 2020年4月11日掲載)

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