電車で地震「津波が来る!」となったら…できることは何か?

写真説明:毎日多くの人が利用している鉄道。列車内や駅で地震に遭遇した場合のことも考えておく必要がある

電車ストップ!混み合う状況のなかで

鉄道網が発達する国内では、列車を利用している際に地震や津波などに遭遇する事態に備える必要がある。鉄道各社は耐震、浸水対策を進めているが、混み合うことが多い電車や駅で被害を防ぐには、乗客一人ひとりの心構えも不可欠だ。架空のシナリオで、どう対処すべきかを考える。

シナリオ1   ドアから線路上に脱出し高台へ…一斉避難

混雑する電車がけたたましい音を立てて、急停車した。手すりをつかんで転倒を防いだ太郎(38)が、周囲を見渡すと、車両のドアが開いた。「地震です。津波の恐れがあります。すぐに高いところへ避難してください!」。車内スピーカーから乗務員の切迫した声が聞こえた。

「本当に津波が来るのか」。そんな思いがよぎる中、何人かの乗客がドアから外へ飛び降りた。車外から駆けつけた運転士が、隣のドアにはしごをかけた。ドアから地面までは約1.2m。はしごがない所では、いったんドアの縁に座ってから降りれば安全だと言う。指示通りに脱出し、他の乗客と一緒に、後続の高齢者や子ども、車いすの男性を抱えて降ろした。

乗客の下車が無事に済み、運転士や車掌の指示で、全員が近くの高台へ急いだ。停車から数十分。たどり着いた高台で後ろを振り返ると、津波が電車をのみ込もうとしていた。

シナリオ2  ホームでは天井やパネルの落下も…改札混雑

「線路から離れてください!」。駅のホームでは、駅員が大声を上げていた。近くにいた妻の花子(36)は、乗車待ちの列から離れ、持っていた手提げカバンで頭を守った。列の先頭にいたスーツ姿の男性が線路に転落。天井のパネルが剥落(はくらく)し、電光掲示板が傾いた。

揺れが収まると、改札口に走って逃げる人たちが見えた。「前の人に続いてゆっくり進んでください」。駅員が叫んだ。改札や階段に人が殺到すると、事故が起きかねない。花子は焦る気持ちをぐっとこらえ、ゆっくりと階段を下りた。

改札口の外はすでに人であふれていた。全線が運行を停止し、タクシー乗り場には早くも長い列ができ始めていた。スマートフォンを取り出し、LINEで家族に無事を知らせるメッセージを送った。家族からも無事だったとの返信が届いた。一安心すると同時に不安が膨らんだ。「どうやって帰ればいいのか」

シナリオ3    余震警戒で移動にためらい…駅で一夜

駅では、行き場がない人たちへの支援が始まった。駅員が大型シートを敷き、ペットボトルの飲料水や防寒用のアルミブランケットなども配って回った。花子も新型コロナウイルス感染を防ごうと、マスクを着けたまま、他人と距離を取って物資の配布を待った。

飲料水を受け取った際、駅員からこう声をかけられた。「無理に帰宅しないでください。構内の公衆電話やトイレは自由に使っていただいて構いませんから」。自宅まで歩き続ければ半日ほど。だが、途中で大きな余震が来るかもしれない。帰宅ルートもよくわかっていない。無理をせず、駅にとどまることにした。

構内のディスプレーでは、全線が終日運休する見込みが伝えられていた。「近くに帰宅困難者の受け入れ施設はなかったか」。スマホのネットもつながりにくく、情報が得られない。「いつも使う駅だから、事前に調べておけばよかった」。花子は駅で一晩明かす覚悟を決め、ブランケットにくるまった。

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