風水害 備える(1)私の街は…ハザードマップで確認(連載)


写真説明:手作りハザードマップは地域の危険箇所や避難経路の理解を深める(愛知県清須市で)

自然災害への備えの大切さは頭では分かっていても、後回しにしがちだ。だが、毎年のように各地で風水害が発生しており、怠ることはできない。水害への備えは地震などにも有効だ。まずは、地域の災害の可能性を知ることから始めたい。

 住民手作りで当事者意識

「口で説明するよりも、危険性は一目瞭然だ。子どもも地図には興味を持ちやすい」。ハザードマップの利点を、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんは語る。

ハザードマップは、自然災害による被害を想定し、その範囲や程度を示した地図だ。洪水や土砂災害、津波など、災害の種類ごとに市区町村などが作成している。

例えば、洪水ハザードマップは、河川が氾濫した際、浸水の深さがどの程度になるかを示す。0.5~1メートルであれば、床上浸水の可能性がある。土砂災害ハザードマップは、崖崩れや土石流で被害が出る恐れのある区域を示す。市区町村などの窓口で冊子のマップを受け取れるほか、ホームページでも公開されている。

渡辺さんは、普段から家族全員でマップを確認するよう助言する。自宅が浸水しない地域にあれば、自宅にとどまる方が安全などと考えることができる。

避難が必要になると分かれば、避難所まで実際に歩いてみるといい。できれば雨の日がいいという。「『土砂降りになったら、この道路は危ないな』といった想像が働きます」

ハザードマップの課題は、認知度が低い点だ。NTTドコモモバイル社会研究所が2019年1月、全国の男女約7000人に行った調査では、知っている人は3割にとどまった。

関心を高めるため、東京大特任教授(災害社会工学)の片田敏孝さんは、住民が自ら地域のハザードマップを作成することを提案する。「防災は、住民が当事者として考えなければならない。マップを作ることで、危険な現実を突き付けられる」

愛知県では10年度から、防災活動を行うNPO法人が協力し、町内会単位で地域の「水害手作りハザードマップ」を作成する取り組みが進む。自治体作成のものより、避難場所や避難経路を分かりやすく表記できる利点がある。作成法は例えば、こうだ。

住民は、自ら地区内を歩いて危険な箇所を洗い出す。水がたまりやすい道路や、道路脇の側溝の蓋がない箇所、街灯が少なく夜間の避難が危険な場所などだ。こうした箇所に色や写真を付けて目立たせながら、ハザードマップを仕上げていく。


清須市蓮花寺地区自治会が作成した水害手作りハザードマップ。青い矢印は「水が流れ込む方向」を、水色は「早めに水につかりやすい場所」を示す(一部加工しています)

同県清須市の禰宜家ねぎや地区自治会と、蓮花寺地区自治会は昨秋に作成した。それぞれ、子どもからお年寄りまで約30人が参加。今月中に住民に配布の予定で、避難訓練で使うことも検討していく。禰宜家地区自治会長の山原義明さん(69)は、「手作りのため、住民の意見を基に改良もできる」と話す。

◆ハザードマップ3か条
▽市区町村のサイトで閲覧
▽家族全員で自宅の危険性を確認
▽雨天時などに避難所まで歩いてみる

授業の教材に

ハザードマップは防災教育に活用することもできる。

東京都江戸川区立本一色小学校では昨年9月、4年生が水害から身を守る方法を考える授業で使った。グループに分かれ、水害ハザードマップで、荒川と江戸川の氾濫、高潮が同時に起きた場合、区内のほとんどで浸水が3メートル以上になることを確認。避難に向けてどんな準備をするか検討して紙に書き出した。帰宅後、家族の間でも避難行動について話し合った。

校長の和田敏郎さんは「子どもたちが防災の話をすると、親の意識も高まる」と話す。同区は今年度、区内の70の小学校でハザードマップを取り入れた授業を行う。

東京大の片田さんは、「防災情報は地域全体に出るが、どのように避難するかは個人が判断しなければならない。子どもの頃から考える習慣をつける上でもハザードマップは有用だ」と話す。

(読売新聞 2020年4月14日掲載)

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