風水害で逃げる時 避難ルートの危険箇所チェック


写真説明:「日本損害保険協会」(東京)の教育プログラム「ぼうさい探検隊」。小学生が街を歩きながら、気づいた点を紙に書き留める(日本損害保険協会提供)

事前に考えておく

冠水した道路、飛んでくる木の枝――。大雨や強風の中、自宅を出て避難する途中には多くの危険が潜んでいる。新型コロナウイルス感染症の影響で、避難所以外への移動の検討を余儀なくされる可能性もある。どう避難するか、事前に考える必要がある。

「日頃からハザードマップを参考に避難所まで歩くなどし、途中に危険箇所がないかをチェックして、安全なルートを見つけておいた方がいい」。防災アドバイザーの岡本裕紀子さんは助言する。

◆避難ルートの主なチェックポイント

※日本損害保険協会への取材などを基に作成

一般社団法人「日本損害保険協会」(東京)は小学生を対象に、街を歩きながら避難ルートの危険箇所などを見て回れる教育プログラム「ぼうさい探検隊」を推奨している。ホームページに実施マニュアルや、事前に災害について学べる手引を掲載。同プログラムが始まった2004年度から昨年度までに、小学校や子ども会などで延べ20万人以上が参加した。

具体的には、避難所や防災備蓄倉庫の場所を確認し、大雨の時に水がたまりやすい道路や、蓋のない側溝といった危険箇所を探して白地図に記していく。参加した小学生からは「自分たちだけで避難できるよう何度も歩き、適切な避難方法を考えることができた」といった声が寄せられているという。プログラムの担当者は「マニュアルを参考に、親子や地域住民にも取り組んでもらえれば」と期待する。

◆避難ルート3か条
▽事前に歩くなどして安全な経路を把握
▽長袖、長ズボンが基本
▽車での移動は慎重に

長袖にひも靴で

夜間の避難は困難が多い。「避難勧告などを待たず、日中に避難することが大切」と岡本さん。

服装など身に着けるものも重要だ。岡本さんは長袖と長ズボンを強く薦める。肌が出ていると、風で飛ばされた物や、やむを得ず冠水した道路を進んだ時に流れてきた物でケガをしやすくなる。速乾性に優れたナイロンやポリエステル素材がいいという。雨具は傘ではなく、両手を使えるレインコートを着用する。

靴は長靴よりも、脱げにくいひも靴を。岡本さんは「長靴は中に水が入ると歩きにくい」と指摘する。ヘルメットも着用。冠水した道路を歩く時に側溝がないかなどを確かめるため、つえやスキーのストックなどがあると便利だ。

車での避難を考える人も多いだろう。だが、昨年10月の台風19号では、車で避難中や移動中に浸水で水没したり、道路の崩落で川に流されたりして死亡する例が相次いだ。徒歩とどちらが安全か、慎重に判断したい。

コロナの影響も考慮

新型コロナウイルスの影響で、多くの人が集まる避難所などへの避難を再検討する必要もある。

NPO法人環境防災総合政策研究機構環境・防災研究所が4月、災害で避難した経験を持つ約2200人に行った調査でも、73%が感染拡大が避難行動に影響すると回答。うち41%が「避難所に行くが、様子を見て避難先を変える」とした。調査を担当した研究員の作間敦さんは「親戚や友人宅なども避難先の選択肢の一つになる。どこへ避難するのがいいか、家族で話し合うなどして事前に決めておくべきだ」と助言する。

 

(読売新聞 2020年5月15日掲載 「防災ニッポン 風水害・逃げる」③)

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