風水害で逃げる時 正常性バイアスに用心して

バイアスを打破するにはどうすべきか。木村さんは、大雨や暴風などの警報が出たら、まだ風雨が強くなくとも、意識的に心の警戒レベルを引き上げ、危険度が格段に高まったと受け止めることが必要だと強調する。いわば、「心のスイッチ」を日常から非日常に切り替えるのだ。

その上で、取るべき行動を事前に決めておく「行動のパッケージ化」を提案する。例えば、スマートフォンのプッシュ通知で警報が届いたら、〈1〉テレビなどでも情報収集する〈2〉ハザードマップを見直す〈3〉非常用持ち出し袋を確認する――などとルールを作っておく。

◆正常性バイアスと対処法

(木村さんへの取材を基に作成)

◆バイアス打破3か条
▽「心のスイッチ」を日常から非日常に
▽取るべき行動をルール化する
▽思い込みを疑う

風雨の程度にかかわらず行動することで、判断に迷って時間を無駄にしたり、周囲の意見に流されたりするリスクを低減できる。空振りに終わっても、「良い危機管理ができたとプラスに考えることが重要」とする。

バイアスは無意識に働くため、自分で気づくことは難しい。木村さんは「誰にでも生じうることだと理解し、『バイアスがかかっているのでは』と自問する習慣を付けることも大切だ」と話す。

「率先避難者」の育成も有効

正常性バイアスに陥らないためには、地域で周囲に避難を呼びかけながら、真っ先に自らが逃げる「率先避難者」の育成も有効とされる。危機感の薄い人でも、他人が逃げる姿を見たり、知人から促されたりすると避難行動を起こしやすいためだ。

山口県は2019年度、自治会ごとに避難を呼びかけるリーダーの育成と、10人規模の班作りを始めた。非常時はリーダーらが緊急連絡網で情報を伝え、班員が助け合って避難所へ向かう。三重県尾鷲市は、自主防災会の会長に「率先避難者」と記したベストとハンドマイクを配り、年2回の訓練で避難手順を確認している。

 

(読売新聞 2020年5月16日掲載 「防災ニッポン 風水害・逃げる」おわり 生活部・崎長敬志、及川昭夫、福島憲佑、梶彩夏、生活教育部・児玉圭太が担当しました)

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