風水害・避難所生活(2)避難所運営に住民参加(連載)


写真説明:静岡県が開発した避難所運営ゲーム「避難所HUG(ハグ)」。平面図を使い、避難所運営を疑似体験できる(静岡県提供)

2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備町。避難勧告が出た7月6日夜、避難所の一つ、二万(にま)小学校には避難者が詰めかけ、混乱した。市職員は受付で避難者名簿を作るのに忙殺され、避難してきた住民自ら、後から続く避難者たちの対応に当たるなどした。

一夜明けた7日、自宅が浸水した避難者約250人は避難所に滞在し続けることになった。六つの班に分かれてそれぞれリーダーを決め、避難者から困りごとや不満を吸い上げる仕組みを作った。住民代表として避難所運営の中心を担った神崎均さん(72)は「避難所生活は長期戦。避難者のコミュニティーを作り、自主的に運営しているという意識付けが重要だった」と振り返る。

避難所生活は行政任せでは立ちゆかない。災害救援を行う認定NPO法人「レスキューストックヤード」(名古屋市)の常務理事、浦野愛さんは、「自治体職員も切羽詰まった中で活動している。動ける避難者が主体性を持って活動することが避難所運営には重要」と指摘する。

主体的な運営のためには、避難者を班分けして役割分担することが大切だという。例えば、困りごとの情報収集をし、避難所の運営情報を周知する「班長」、トイレなど共用部分の掃除をする「清掃係」、配食などを担う「食事係」などに分ける。一体感が生まれてコミュニケーションが活発になったり、互いへの気配りが働きやすくなったりする。

◆主体的運営3か条
▽避難者で役割分担
▽マニュアルを事前に確認
▽疑似体験も

避難所が開設されると、ボランティアや医療関係者らが駆けつける。ただ、新型コロナウイルスの感染の恐れがある今、地域外からの支援は受けにくい。「避難所内での感染防止に努めながら、住民の力で乗り越えていかなければなりません」と浦野さん。

事前に、避難所運営の全体像をつかんでおくことも重要だ。災害支援・防災教育コーディネーターの宮崎賢哉さんは、「自治体が避難所運営のマニュアルを作成していても、住民が内容を知らないことが多い。自治体のホームページなどで内容を確認しておきたい」と話す。過去の災害で避難所生活の何に困り、どう対応したのかを、災害支援団体のホームページなどで学ぶのも有用だ。

大がかりな訓練をせずに避難所運営を疑似体験できるカードゲームもある。静岡県が07年に開発した避難所運営ゲーム「避難所HUG(ハグ)」だ。

カードには避難者の年齢や性別のほか、「全壊。世帯主と長男が行方不明。取り乱して話が聞けない」「床上浸水。妻は妊娠9か月で、猫を1匹連れてきた」などの状況が書き込まれている。カード1枚を避難者1人に見立て、架空の避難所の平面図に配置することで、避難者の誘導などを体験する。

「風水害」版は、開発に携わった元県職員の倉野康彦さんが無料で貸し出しており、「地震」版は、NPO法人「静岡県作業所連合会・わ」が県と契約して製造・販売している。倉野さんは「避難所の運営を経験することはまれだ。いざという時に動けるようにするために、まずはカードゲームに取り組んでほしい」と助言する。

 

(読売新聞 2020年6月18日掲載)

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