風水害・避難所生活では女性や子どもに配慮が必要

写真説明:2017年7月の九州北部豪雨の後に子育て中の母親を支援するために設けられた「朝倉災害母子支援センターきずな」(提供写真)

集団生活による負担の影響を受けやすい

多くの人が身を寄せる避難所では、集団生活による負担が大きい。影響を受けやすい女性や子ども、高齢者などへの配慮が欠かせない。

男女別の更衣スペースや授乳スペースの用意、男性用の3倍の数の女性用トイレの確保――。内閣府男女共同参画局は5月、自治体向けに公表したガイドラインで、避難所において女性避難者らに配慮すべきポイントをまとめ、チェックリストも掲載した。

「開設当初の避難所は混乱し、女性への配慮が十分だとは限らない。避難者自ら動いて実現していく必要がある」。九州大准教授(防災教育)の杉本めぐみさんは、こう指摘する。

女性避難者には施設面だけでなく、運営面でもしわ寄せが来る場合が多い。過去の災害では、女性が炊き出しや掃除など負担の大きい役割を担い、疲弊する問題も指摘されている。

役割分担の偏りはないか

「非常時にはどうしても役割分担が偏ってしまう。男女で平等に運営するという意識を強く持ち、分担するルールを住民同士で作ることが重要」と杉本さん。生理用品や女性用下着などの物資は、女性の避難者や自治体職員が配布を担当する配慮も求められるという。

育児中の女性には、さらに配慮が必要だ。「熊本市男女共同参画センターはあもにい」が熊本地震の1年後の2017年、市内の未就学児を持つ女性に行ったアンケートでは、避難所にいた約460人のうち3割が、感じた不安に「子どもが夜泣きする等で迷惑をかけることへの心配」を挙げた。「夜でも電気がついたままで、子どもを寝かせるのに苦労した」といった声も寄せられた。

踏み込んだ取り組みも見られる。福岡県朝倉市では17年の九州北部豪雨を機に、保育士や助産師らの主導で、産婦人科病院として元々使われていた建物を、母子や女性向けの施設「朝倉災害母子支援センターきずな」として開放した。事務局長の大庭きみ子さんは、「避難中であっても男性も育児を担うべきだが、実際は女性が負担することが多い」と指摘。専用の建物が確保できなくても、避難所内に幼児や小学生などが遊んだり勉強したりできるスペースを設けると、子どものストレス解消になり、親の負担も減らせるという。

災害前から行政や住民代表らが避難所の質の向上に向けて話し合う「避難所運営委員会」が設置されている例もある。災害時、女性らへの配慮がいち早く行き渡るようにするために、女性が委員として加わることも大切だ。

千葉市では、避難所のあり方を含めた地域防災計画を策定する防災会議に、男女共同参画を考える部会を設けた。さらに、避難所運営委員会への女性の参加を呼びかけるなどし、女性委員の割合は全市で約3割まで上がった。

避難所では、高齢者に健康などを気遣って声がけし、近くのトイレを優先して使ってもらうなどの配慮も求められる。減災と男女共同参画研修推進センター(東京)の共同代表、浅野幸子さんは「女性は日常の生活の中で、子どもや高齢者と接する機会が男性より多い。女性のリーダーが加わることで、避難所運営に多様な人の意見が反映されやすくなる」と指摘する。

◆女性らへの配慮3か条
▽役割分担は男女平等に
▽育児中の女性は特に必要
▽運営に参加してもらう

 

(読売新聞 2020年6月19日掲載 「防災ニッポン 風水害・避難所生活」③)

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