風水害・避難所生活(4)血栓、熱中症にも用心(連載)


写真説明:2018年6月の大阪北部地震では、暑さ対策で避難所の体育館に扇風機が設置された(大阪府茨木市で)

避難所運営では、新型コロナウイルス感染症対策の重要性が叫ばれているが、エコノミークラス症候群などの危険性も忘れてはならない。

「元気な人でも同じ姿勢を6時間以上保つと、ふくらはぎなど脚の静脈に血栓(血の塊)ができる危険性が高まる」。熊本市立植木病院長で循環器内科医の掃本(ほきもと)誠治さんは、こう指摘する。

脚の筋肉は心臓に次ぐ「第2のポンプ」と呼ばれ、静脈の血流を促す。動かさなければ、ポンプの作用が弱まって血流が滞り、血栓ができやすくなる。血栓が肺の血管に詰まると、呼吸困難や激しい胸の痛みを引き起こす。エコノミークラス症候群だ。

死に至る恐れもある。避難所内の狭いスペースでの雑魚寝や、駐車場などにとめた車の中で寝泊まりする「車中泊」は、特に注意が必要だ。

2016年の熊本地震では、車中泊をしていた50代女性が死亡したほか、症状が疑われるケースが相次いだ。掃本さんらの調査では、避難所に身を寄せた2315人のうち、脚に血栓が見つかったのは9・5%。通常時の2倍以上だった。70歳以上の高齢者や脚にむくみがある人に目立った。18年の西日本豪雨でも、60代女性が車内で一晩を過ごした後に亡くなった。

対策は進められている。西日本豪雨では寝返りしやすい段ボールベッドを設置したり、血流を良くする弾性ストッキングを配布したりした。

個人でできる予防では、ストレッチや軽い運動が有効だ。国立健康・栄養研究所がホームページで紹介する予防運動が参考になる。足首の曲げ伸ばしをしたり、ふくらはぎを軽くもんだりする運動を1~2時間おきに行うだけでもいい。

車中泊では座ったまま寝るのは避ける。後部座席を倒すなどし、水平に横たわれるスペースを確保しよう。

これからの時期、熱中症対策も必須だ。新型コロナの影響で外出の機会が少なく、体が暑さに慣れていない場合などは例年以上に警戒したい。

<主な症状>
●エコノミークラス症候群

  • 脚の腫れや痛み
  • 冷や汗
  • 胸の痛み
  • 呼吸困難や息切れ

●熱中症

  • めまいや立ちくらみ
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 汗が止まる

(厚生労働省などの資料を基に作成)

予防策は、
▽こまめな水分補給
▽ぬらしたタオルなどで首の付け根、わきを冷やす
▽屋外では帽子などで直射日光を避ける
など。新型コロナ対策のマスクは、周囲に人がいなければ外していい。

水分補給では経口補水液がお薦めだ。水1リットルに砂糖大さじ4杯、塩小さじ1/2杯を入れるだけで、避難所でも作りやすい。利尿作用のあるお茶やアルコールは脱水を起こす危険性があり、控えたい。

掃本さんは「予防の大切さは頭で理解しても、避難中に続けるのは難しい。避難者同士の声かけも重要」と話す。

◆エコノミークラス症候群、熱中症予防3か条
▽ストレッチや軽い運動
▽こまめな水分補給
▽アルコールを控える

◆気持ちの張り合いを
心のケアも大切だ。日本心理臨床学会は、避難所での心の持ちようや対処のポイントをまとめている。

災害直後は、強いショックでぼう然としたり、気分がピリピリしたりしがちだ。可能な範囲で避難所運営の仕事を引き受けるなどし、気持ちの張り合いを保つようにしたい。同会は「避難所生活が長引くと心身に疲れが出やすくなる。十分な休憩や睡眠を取るよう心掛け、時間をかけて食事したり、気の合う人と雑談したりするのが望ましい」としている。

 

(読売新聞 2020年6月20日掲載 「風水害・避難所生活」おわり 生活部・崎長敬志、福島憲佑、梶彩夏、生活教育部・児玉圭太が担当しました)

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