「釜石の奇跡」で知られる片田敏孝氏が語る防災啓発の神髄

学生時代には集落を訪ねた

学生時代に専攻したテーマは過疎問題。マイナスイメージで捉えられがちだが、集落を訪ねると、日々の暮らしに充実ぶりがうかがえるお年寄りの姿があった。彼らの「道理」を知るために、何日も現地に通い詰め、話に耳を傾けた。この経験は、その後の研究者人生にも大いに役立った。

「釜石の奇跡」のこと

2011年の東日本大震災の際、岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)地区の小中学生を含め、市内で多くの子どもが無事避難した「釜石の奇跡」。同市で防災教育を始めたのは大震災の約8年前のことだった。当初、多くの児童は「堤防があるから逃げなくてもいい」と信じていた。話をよく聞いてみると、各家庭でそう教えられていたことを知った。地域住民にはこう問いかけた。

「大人が逃げなかったら、津波が来た時、家族はどうなりますか」

自分ではなく、大切な家族のことを考えてもらうように「意識改革」を求めた。その後、住民の心持ちには徐々に変化が生まれた。この積み重ねが「釜石の奇跡」につながった。大切な人や家族の存在が、人々の行動を変える大きな「道理」となっていることを確信している。

写真説明:津波の避難行動が「釜石の奇跡」として知られる岩手県釜石市鵜住居地区の小中学校(2011年3月12日)

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