外出先や観光地で地震!慌てずに行動するためこれだけは知っておこう(前編)

シナリオ2 たどり着いた体育館「満杯」…遠い自宅

日がだんだん傾いていく。「車中泊をするしかないか」。太郎がつぶやくと、「怖いわ」と花子。管理事務所の人に聞くと、近くの中学校の体育館が避難所になっているのではないか、と言う。「とりあえず向かおう」。太郎は長女の手を引き、教わった道を歩き始めた。

途中、倒壊した建物も見える。余震が起きるたびに立ち止まり、安全を確かめながら、ゆっくり進んだ。

「すいません。これ以上は受け入れられません」。30分後にたどり着いた中学校で告げられ、太郎と花子は肩を落とした。体育館は新型コロナウイルス対策で、避難してきた家族間の間隔を空けており、定員はすでにいっぱいだという。

長女がぐずり始めている。他に身を寄せられる場所がないか、避難所の住民に尋ねると、近くのショッピングモールを教えてくれた。「行くしかないな」。花子もうなずく。

さらに30分歩いた。モールでは、足止めされた買い物客らに建物内の通路を開放していた。コロナ禍で客が少なめだったこともあり、太郎らも一角で夜を過ごせることに。水やおにぎり、毛布なども受け取れた。「何とかなった」

シナリオ3 スマホ不通 連絡手段なく…通信途絶

「お母さんとまだ連絡が取れない」。太郎がホッとしたのもつかの間、花子が深刻な表情で告げた。

同居する太郎の母が、自宅で留守番をしていた。家に固定電話はない。地震が起きてから、花子が何度か連絡を取ろうとしていたが、スマホもつながらず、メールも届いていないようだという。太郎も自分のスマホを取り出し、電話をしてみるが、やはりつながらない。

「念のため公衆電話からかけてみたら」。花子の言葉に、太郎はトイレの近くに設置された公衆電話へ向かった。すでに多くの人が順番待ちをしている列に並ぶ。

ようやく順番が回ってきたのは、30分後。だが、自宅周辺の電波状況も悪いのか、何度か電話しても、つながらない。

戻らない太郎を心配した花子が長女とやってきた。「災害用伝言ダイヤルはどうかしら」。「171」にかけ、メッセージを録音できるシステムで、周囲の人が話題にしていたという。「お袋は使い方を知らないと思うよ」。そう言う太郎に、後ろで並ぶ人がイライラして舌打ちするのが聞こえた。焦りが募った。

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