被災地に海から!連絡船からできた国内初の民間災害医療船いぶきルポ

災害医療船になるまで

約80人分の長いすを撤去し、客室を治療スペースにかえた。血液や尿の検査に加え、けがの治療や点滴などの医療器具も整備した。ベッドは、カーテンで仕切ると個室になる。手術室や高度な医療機器はないが、安心できる「町の診療所」だ。
PWJが医療船を持つきっかけは2011年の東日本大震災だ。陸路での移動に苦労し、支援活動が滞った上に、多くの病院が患者の受け入れを制限する状況を目の当たりにした。

いぶきは災害時には、心肺蘇生用の装置も積み込み、治療にあたる予定だという。船長の杉本陸さんは「島国の日本なら、どこでも船で駆けつけられる。船が持つ可能性を最大限生かし、より被災者に寄り添う支援をしたい」と強調した。

災害時の船舶活用の現状

災害のたびに、必要性が議論される「船の活用」。しかし、実現への課題は多い。

海外の状況

海外は軍の病院船が目立つ。手術室や集中治療設備を備える病院船は、2021年3月時点で少なくとも中国とロシアが各3隻、米国が2隻を配備。米の「マーシー」は約1000床を備え、世界最大級とされる。

◆病院船などの事例(ロシア、中国、米国)

◆病院船などの事例(英国、フランス)

日本の状況

国内では東日本大震災後の2012年、病院船導入に向けた国の検討会が発足した。2013年の報告書では、災害時の医療拠点として有効性は確認する一方、要員確保や平時の活用などが課題と指摘した。米国などと同規模の病院船導入にかかる経費も、1隻あたり建造費約350億円、維持費年約25億円とはじいた。

◆災害時における船舶活用について

政府は当時、病院船新造は困難と判断した。新型コロナウイルス感染拡大に伴って2021年、議論が再燃しているが、課題解決のメドは立っていない。当面は民間船や医療機能を備えた自衛隊艦艇などの活用を想定する。

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS