豪雨災害時の高齢者施設(後編)お年寄りの命や安全どう守る?

六つのポイント以外では

被災後は、施設を復旧させるための人的支援も重要だ。埼玉県老人福祉施設協議会は今年度、400の会員施設で安否確認アプリを導入した。被災時に情報を共有し、必要な人材を被災施設に集め、円滑な支援ができる態勢作りを目指している。池田徳幸副会長は「混乱時に情報を整理・共有するには電話よりもアプリが有効だ」と話す。

施設にお年寄りを預ける家族に求められること

同志社大の立木茂雄教授(福祉防災学)は「高齢者を施設に任せきりとなってしまいがちだが、預ける家族側も、ケアマネジャーを通して施設の防災態勢を尋ねるなど、関心をもつことが大事だ」と指摘している。

施設内の「垂直避難」について

洪水を想定した避難方法として、より高い層へと逃げる「垂直避難」が、各施設に浸透しつつある。

2019年10月に台風による浸水被害を受けた特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」(埼玉県川越市)では、近くの河川が氾濫する前に利用者100人が平屋建ての施設にいたが、停電などに見舞われながらも隣接する施設の上階へと移動し、全員が無事だった。早めの避難行動ができたのは、浸水被害経験のある同施設の危機感と日頃の訓練があったからだと言われている。

垂直避難は主に、外の避難所へと移動することが困難な場合に有効だ。既に浸水が始まっていたり、避難する時間や手段が確保出来なかったりする場合も少なくない。

備蓄品の保管場所にも

垂直避難の考えは、備蓄品にもあてはまる。発電機、医療機器、備蓄食料などは上階に保管することで、水没などの被害を回避でき、被災後の数日間の生命を維持するのに役に立つ。

垂直避難しても、結果として浸水被害はなかった、という事態もあるかもしれない。しかし避難行動は多くのデータや課題を得ることができる。全員が上階に避難するのに何分かかるのか、階段は被災時に使いやすいのか、停電時にエレベーターが止まったらどうなるのかなど、次回に生かせる貴重な教訓を得ることが出来る。

(読売新聞 2021年10月12日掲載 「防災ニッポン 高齢者施設の避難」 社会保障部・栗原守、小野健太郎)

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