シナリオ3 冷える車内 我慢の頂点…後悔
現地を出発する際、帰宅を急いでガソリンを入れ忘れたことに、太郎は気付いた。そろそろ底をつきそうだ。「なんで満タンにしておかなかったの」と花子。立ち往生が解消された時、車が動けなくなる恐れもある。エンジンを切ることにした。
だが、車内温度はだんだん低下する。持っていたカイロはスキー場で全て使ってしまった。太郎と花子は暖を取るためにニット帽をかぶり、スキーウェアの上下を着込んで手袋をする。体も丸めて暖まろうとするが、寒さは防げない。少しずつ、しんどくなってきた。
辺りはもう真っ暗になっていた。雪は少し弱くなったものの降り続いている。雪かきをしないと、車体が雪に埋もれて出られなくなりそうだ。太郎は寒さをこらえながら、時々、車外に出ては雪かきをした。
「そういえば、昼飯を食べてから、何も口にしてない。おなかがすいてきたね」。車内に戻った太郎が助手席の花子に話しかけると、苦しそうにしている。「トイレに行きたい」
サービスエリアでトイレ休憩をしてから、用を足していなかった。何か情報はないかスマートフォンを見るが、バッテリーは残りわずかだ。「サービスエリアにとどまっていたら」。後悔しかなかった。(後編に続く)
(読売新聞 2021年11月11日掲載 「防災ニッポン 冬の緊急事態」 生活部・梶彩夏)
※後編では、大雪による車の立ち往生に巻き込まれたときの対処方法や事前の備え、そして自宅の屋根の雪下ろしをする際の注意点などを紹介します。
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