3.11の停電下で東北の警察無線を燃料運んで死守した

使命を果たすには燃料補給が必須だった

情報通信部の災害時の使命は、警察無線を守ることです。通信手段がなくなれば現場の状況が見えず、指示も出せないため、治安を守る警察活動ができなくなります。

停電の中、県内各地にある無線の中継所は非常用の発動発電機で稼働を続けていました。しかし、放っておけば燃料切れで止まります。翌日から燃料補給班を作り、各地に派遣しました。職員たちは、ポリタンクを背負って津波の水につかったままの道路などを乗り越え、中継所を目指しました。山の上にある中継所に行くためにヘリコプターで降下したり、雪山を登ったりしてたどりつくと、泊まり込みで作業にあたりました。

作業は中継所に通電するまで1か月以上続きました。警察無線は最後まで途切れることがありませんでした。携帯電話が不通となる中でも仕事をやり遂げられて、安堵(あんど)したのを覚えています。

あの状況で警察無線を死守できた理由

無線を守り切れたのは決して奇跡ではなく、震災前から地震を想定した訓練を欠かさなかった成果だと思います。

写真説明:菊地光一さん

震災から10年がたち、当時を知らない職員も増えました。2021年、震災を体験した職員の手記集を作成しました。ホームページで公開しているので一般の方にも読んでもらいたいです(https://www.tohoku.npa.go.jp/kohou/shuki.pdf)。今後は情報通信部の技術とスピリットを伝える後進教育に力を注いでいきます。

(読売新聞 2021年10月5日掲載 「伝える 復興に向けて」(166) 東北総局・松下聖)

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