猛烈な低気圧がもたらす冬の嵐!台風並みの警戒春先まで必要に

猛烈な低気圧に影響する2つの渦とは

大気の下層(地上~上空約3km)では暖気と寒気がぶつかって渦ができ、上層(上空約5~10km)を流れる高速の気流(ジェット気流)の蛇行部でも渦が生じる。これら上下2つの渦がつながれば、低気圧が急速に発達する。2021年1月の荒天時も2つの渦が確認されており、相乗効果で勢力を強めたとみられる。

◆「2つの渦」で低気圧が発達する仕組み
大気の上層と下層にある2つの渦が一体化し、低気圧が急速に発達する

2022年2月までの見通しは

気象庁は、2021年12月~2022年2月に大陸から寒気が流れ込みやすくなると予想しており、「海洋と大気の状況が2021年1月頃の状況と似ており、再び大雪に見舞われる可能性がある」と警戒を呼びかける。

渦の発達には暖流・黒潮の海水温が影響する

日本列島に暖かい海水を運ぶ黒潮も、低気圧の発達に影響していることが分かってきた。

京都大防災研究所の吉田聡准教授(気象学)によると、暖かい海上の水蒸気を取り込んで発達する台風と同じように、低気圧も黒潮が供給する水蒸気によって勢力を増すという。

吉田准教授らは、和歌山県串本町の潮岬などで上空の水蒸気分布を調べる研究を進めている。水蒸気が出す微弱な電磁波を捉える装置「小型マイクロ波放射計」を使い、黒潮から立ち上る水蒸気を即時に把握しようとする試みで、観測を繰り返して精度を高めている。

◆吉田准教授らが進める水蒸気観測の研究

上空の水蒸気については現在、気象庁が国内16か所で観測気球を上げて調べているものの、観測は1日2回にとどまる。小型マイクロ波放射計なら、様々な高度の水蒸気量を切れ目なく観測できるという。冬場だけでなく、梅雨期に発生する線状降水帯の研究でも利用することにしている。

近年は温暖化の影響で、黒潮の海水温が上昇傾向にあり、冬場も暖かく湿った空気が南から流れ込みやすくなっている。吉田准教授は「水蒸気の動向を常時把握できる観測網があれば、天候予測の精度向上が期待でき、防災につながる」と強調する。

(読売新聞 2021年12月10日掲載 科学医療部・長尾尚実)

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