高層ビルで大地震!長周期地震動で揺れが大きく長く襲う(前編)

シナリオ2 エレベーターが使えずに階段使って1時間後「脱出」

揺れは10分近く続いて、ようやく小さくなってきた。窓の外では、周辺の高層ビルがぐらりぐらりと揺れている。

在宅ワーク中の妻の花子(38)に電話したがつながらない。1階に下りることにしたが、エレベーターは停止していた。

館内放送は「緊急停止したので、動きません」と繰り返している。つり下げている長いロープが共振して、絡まったのかもしれない。中に閉じ込められた人は、専門の保守員を待つしかない。エレベーターの隅に設置されたイス型の防災用品セットには、水や非常用ライトが入っている。トイレとしても使えるが、被害は各地で起きているようだ。

「非常用階段を使うしかないか」。足を痛めた同僚は、災害用担架では運べないので、交代して背負って下りることにした。

余震のたびに、非常階段には悲鳴が響いた。太郎も先ほどの恐怖がよみがえり、とっさにしゃがみ込む。途中から「渋滞」が始まった。全フロアの人が一斉に下りられるスペースは確保されていないためだ。

外に出ることができたのは、約1時間後のことだった。スマートフォンを確認すると、震源付近は最大震度7。東京は震度4が多いが、長周期地震動は4段階中で最大の「階級4」だった。

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