京都の災害史で鴨川は暴れ川!風水害への備えは今も重要

いまの治水対策に目を転じると

冒頭の大洪水を機に、近代の治水は進んだ。川底は2~3m掘り下げられ、川沿いを走っていた京阪電鉄の地下化が実現したことで、川幅も広げられた。ただ、どこまでいっても「万全」はなく、工事は現在進行形だ。

京都・鴨川ならではの課題

現代の防鴨河使ともいえる京都府河川課の担当者が「治水と景観のバランスをどう取るかが重要だ」と話すように、関係者は「鴨川ならではの難しさがある」と口をそろえる。確かに、壁のような堤防を建てれば、氾濫のリスクは減るだろう。一方で、歴史ある街を分断することになってしまう。

写真説明:堤防を建設すれば氾濫リスクは減るが、景観とのバランスが重要だ(京都市中京区の四条大橋近くで)

必要な備えをどう考えればいいのか

近年、京都府内でもたびたび水害が起きている。2012年8月には、宇治市で死者2人を出した府南部豪雨が発生。桂川などが氾濫し、嵐山の渡月橋が損壊した2013年9月の台風18号や、福知山市の市街地が冠水した2014年8月豪雨も、大きな被害をもたらした。2021年8月には鴨川が濁流となるほどの大雨が降るなど、異常な降雨が増えている。

府は2018年、新たな浸水想定区域図を公表した。全国で水害が多発していることもあり、24時間雨量を「1000年に一度」レベルの736 mmと想定。現実になれば、三条や四条河原町の繁華街は2~3m以上、JR京都駅も1m以上浸水することになる。

京都市防災危機管理室は「鴨川沿いには繁華街の地下もあり、危険だ。住む場所や建物の高さに応じた避難行動を、日頃から考えておいてほしい」と訴える。

普段は穏やかな鴨川には、もう一つの顔がある。それをしっかり見据えることで、助かる命がある。

(読売新聞 2022年1月20日掲載)

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