夜の津波警報!(前編)真っ暗闇な街でどこにどう避難する?

シナリオ3 渋滞の車列を抜いて脇道から高台へ…間に合うのか心配

比較的大きな道に出ると、他の住民たちも続々と避難していた。急いで家を出てきたのか、コートやダウンジャケットなどを羽織らずに歩いている人もいる。「この寒さの中……」。太郎は気になったが、花子と先を急いだ。

カーブを曲がると、前方が急に真っ赤になった。連なった車のブレーキランプだった。車で避難した人たちの渋滞が発生していたのだ。車列は遅々として動かず、寒さの中でも窓から顔を出し、前方をうかがうドライバーもいる。

道を急ぐ太郎と花子は、渋滞の最後尾に追い付くと、車をどんどん追い抜いていった。やがて、車列の途中で脇道にそれる。歩き続けると、避難場所となっている高台の小学校の体育館に到着した。

館内では避難者が寒さの中、身を寄せ合うようにしている。春コートなどを着てきたとはいえ、太郎と花子も体が冷え、震えていた。花子がふとつぶやく。「何も羽織らずに歩いていた人、大丈夫かな」

津波はあとどれくらいで、到達するのだろうか。あるいは、もう到達しているのかもしれない。そう考えると、太郎は渋滞した車の中にいた人たちの安否が気がかりで仕方がなかった。

(読売新聞 2022年3月13日掲載 「防災ニッポン 夜間の津波避難」 生活部・梶彩夏)

後編では、夜間に津波から避難する際の注意点や寝室に準備しておきたいものなどを紹介します。

<関連する記事はこちら>
乳幼児や妊娠中の防災対策(前編)こんな避難になったら困る

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS