線状降水帯の半日前予報を開始!豪雨災害対策はどこまで進んだ?

気象庁、民間船舶の協力得て地域単位の予測に

各地に豪雨災害をもたらしている「線状降水帯」について、気象庁が2022年6月1日から、発生の半日前に予報する取り組み(=図)を始める。海から陸に流れ込む暖かい空気により発生する線状降水帯の予測は、海上の水蒸気量の観測が必要で難しいとされてきたが、民間船舶の協力を得て態勢を構築した。発生地域の予測は、当面は「九州北部」など広い範囲になるが、将来的に市町村単位まで絞り込むことを目指す。

こちらの記事もおすすめ!→佐賀気象台地域防災官「大雨は九州に限らない。気象情報で命を守って」

線状降水帯はどのような災害をもたらすのか

2020年7月の九州豪雨

線状降水帯は、海から流入する暖かく湿った空気が陸上で積乱雲となり、次々と帯状に連なることで狭い範囲に短時間で多量の雨を降らせる。代表的な災害は2020年7月の九州豪雨だ。熊本県球磨村の1時間雨量は過去最多の83・5mmを記録。球磨川が氾濫するなどして88人が犠牲になった。

雨脚は急激に強まった

「早い段階で線状降水帯が発生するとわかっていれば、違った対応ができたのではないか」。球磨村防災管理官の中渡徹さんがそう振り返るのは、深夜から未明に急激に雨脚が強まり、被害を拡大させたからだ。

写真説明:大雨で球磨川が氾濫し、熊本県人吉市の市街地は冠水した(2020年7月4日、熊本県人吉市で)

球磨村の対応と避難の状況

2020年7月3日、村は午後5時に避難所を開設して「避難準備・高齢者等避難開始」(当時の名称)を発令した。午後10時20分に「避難勧告」(同)に切り替えたが、午後11時時点で5か所の避難所に足を運んだのは計20人しかいなかった。

雨脚は4日未明からさらに強まり、球磨川の水位は午前1時50分からの1時間半で3.18mも上昇。午前3時半に「避難指示(緊急)」(同)を発令したが、村内では高齢者施設や自宅にいた計25人が死亡した。

中渡さんは「『避難は明るいうちに』が基本。半日早く危険が予測できれば、単独で避難が難しい高齢者らにも働きかけができたはずだ」と語る。

線状降水帯で被害が拡大した他の災害

線状降水帯が被害を拡大させた災害は、このほかにも、2014年8月の広島土砂災害(死者77人)、2015年9月の関東・東北豪雨(死者20人)、2018年7月の西日本豪雨(死者と行方不明者計300人超)などがある。

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS