線状降水帯の半日前予報を開始!豪雨災害対策はどこまで進んだ?

気象庁の線状降水帯対応

相次ぐ災害を受け、気象庁は2020年から計約315億円の予算を投じ、線状降水帯の観測体制を強化した。2021年6月からは、線状降水帯の発生を確認すると「顕著な大雨に関する情報」を発表し、注意を呼びかける運用を開始。9月までの3か月間で九州や山陰などの西日本と伊豆諸島(東京都)で計17回発表している。

予測に不可欠な海上の水蒸気量データ

ただ、発生の予測は、東シナ海から太平洋にかけて広範囲にわたる海上の水蒸気量のデータが不可欠で難しいとされてきた。衛星からの電波を利用して測定するため、受信機を搭載した複数の船を列島沿岸に展開する必要があるが、気象庁の観測船(=写真)は2隻しかなかったためだ。

そこで気象庁では、国内で定期運航するフェリーや貨物船、海上保安庁の測量船などに協力を要請。観測機器を船に搭載して運航してもらう約束を取り付けて、2022年6月以降、計16隻で観測できる態勢を整えた。また陸上の態勢も強化している。湿度計を2020年時点の155から2022年度中に3倍以上に増やし、水蒸気量をマイクロ波で観測する機器も新たに導入、西日本を中心に17か所に設置する。

半日から6時間前をめどに発生時間帯と地域を発表

気象庁では、こうして収集したデータをスーパーコンピューターで分析し、線状降水帯の発生が見込まれると判断した場合、半日から6時間前をめどに、発生時間帯と地域を発表する。新予報について2019~21年に発生した大雨の事例を基に精度を検証した結果、発生を的中させる確率は5割程度で、予報を出した約8割のケースで、3時間に150mm以上の災害級の大雨が観測されていた。

発生地域については、2022年は「九州北部」など大まかな地域別となるが、予測プログラムを改良することで、2024年には都道府県単位、2029年に市町村単位まで精度を向上させる。

◆予測のイメージ

気象庁技術開発推進室の伊藤渉調査官は「困難とされてきた予測だが、運用できるところまでこぎ着けた。一人でも多くの人の命を守れるように、改善を重ねていきたい」と話している。

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