富士山噴火で車避難がNGな理由!走行阻む「火山灰」

写真説明:実証実験で火山灰の積もった坂を上ろうとして前輪が空転した車(2021年11月、山梨県富士吉田市で)

「避難計画」では溶岩からの避難は「原則徒歩」

山梨、静岡、神奈川の3県などでつくる富士山火山防災対策協議会が2022年3月に公表した、富士山噴火に関する新しい避難計画の中間報告では、溶岩流からの避難について、渋滞を避けるために「原則徒歩」の方針が示された。仮に車で避難しようとしても、火山灰が障害となる可能性がある。山梨県富士山科学研究所の調査で、タイヤチェーンを履いた車で火山灰上を走行すると、むしろ装着しない車よりもスタックしやすくなることが分かった。

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全国初の大規模実証実験でわかったこと

実証実験の概要

2021年秋、山梨県富士吉田市の富士北麓公園で行われた「全国初」の大規模な実証実験。工事現場から出てきた宝永噴火(1707年)の火山灰など123㎥を用いてコースを造成し、車両の走行性能を確かめた(=写真)。重量や大きさの異なる複数の車種で繰り返し走行し、試験の総実施回数は560回に及んだ。

タイヤチェーン装着の有無でどう変わる

中でも、チェーン装着の有無では直感に反する結果が得られた。12cm程度の火山灰が積もった傾斜5%の坂を上るコースでは、樹脂製や金属製のチェーンを装着した車は、装着しない車よりも到達距離が1・6~2・2m短く、よりスタックしやすくなる結果となった。平地での比較では有意な差はみられなかった。

◆チェーン装着の有無

※山梨県富士山科学研究所への取材を基に作成。登坂コースは傾斜5%、灰の厚さは12㎝程度。チェーン装着車はいずれも二駆

チェーン装着が逆効果な理由

同研究所の西沢達治研究員(岩石学)は「車がスタックしないためには堆積(たいせき)路面に沈み込まないことが重要だが、チェーンを履くことで下に掘り進む力が強まり、より沈み込んで動かなくなってしまう」とメカニズムを説明する。

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