富士山噴火で車避難がNGな理由!走行阻む「火山灰」

四輪駆動車と二輪駆動車の比較

一方、四輪駆動車(4WD)と二輪駆動車(2WD)の比較では、4WDが安定した性能を発揮した。

10cm程度の堆積では傾斜にかかわらず2WD、4WDともに走破できた。だが、堆積12cm程度の坂道や20cm程度の平地では、4WDは走破できたが、2WDは途中でスタックしてしまった。

◆4WDと2WDの違い

※山梨県富士山科学研究所への取材を基に作成。登坂コースは傾斜5%、灰の厚さは12㎝程度。チェーン装着車はいずれも二駆

※山梨県富士山科学研究所への取材を基に作成。灰の厚さは20cm程度の平地。チェーン装着車はいずれも二駆

4WDでは駆動力が4輪に分散して伝わり、駆動面と灰の接地が増えることから、雪道と同じ原理で走行性が高まるという。

ブレーキの踏み始めから停止までの距離

また、実験では、ブレーキを踏み始めてから止まるまでの制動距離について、火山灰上では通常の1・2~2・9倍伸びることや、雨でぬかるんだ火山灰上ではさらに走行性能が低下することなどが分かった。

このほか、市販の自転車でも走行試験を実施した。火山灰の厚さが5cmを超えるとペダルをこぐのが困難になる。数mm程度なら走行可能だが、滑りやすくカーブで転倒する恐れがあるという。

西沢研究員は「車がスタックすれば渋滞を招き、緊急車両の通行を妨げる恐れもある。自家用車を使用する場合も、除灰完了後が原則となる」と訴える。

◆実験結果のポイント
・自家用車の使用は除灰完了後とし、原則は徒歩で避難する
・どうしても運転する必要がある場合は、四輪駆動車で速度を落として走行する
・降灰中は視界不良にも注意
・チェーンは使用しない

富士山噴火による降灰の被害想定

内閣府の中央防災会議の資料によると、富士山噴火による降灰は、富士北麓地域で最大30~50cm程度、甲府盆地内など山梨県内の広い範囲で最大2~10cm程度と予測されている。微量の降灰でも鉄道の運行が停止するほか、水質悪化による断水、停電や通信障害など様々な影響が懸念される。

富士山は300年間平静を保ち続けているが、今後も続く保証はない。「その日」への備えが万全か、自問を続ける姿勢が欠かせない。

(読売新聞 2022年4月6日掲載 甲府支局・清水誠勝)

<関連する記事はこちら>

17年ぶり改定! 富士山の噴火で溶岩流が新幹線を分断する!?

無断転載禁止

この記事をシェアする

オススメ記事

新着記事

公式SNS