風水害・共助(2) 住民組織 活性化が急務(連載)

写真説明:昨年、台風19号が接近する中、避難を呼びかける仙台市の自主防災組織役員(提供写真)

先進事例に学ぶ

「避難してください」。昨年10月、台風19号が迫っていた仙台市宮城野区福住町地区で、自主防災組織の役員が日中、車で巡回し、スピーカーで呼びかけた。台風は夜に近づく予報で、暗くなってからの避難は危険なためだ。423世帯中43世帯が浸水被害を受けたが、早めの避難で人的被害はゼロに抑えられた。

川沿いにあり、水害に度々見舞われてきた同地区では、2003年に自主防災組織を設立。21班体制で、「救急救護」「情報収集」「消防協力」「救護物資」「給食給水」の五つの役割を1年交代で分担し、5年で一通り経験できる仕組みにしている。自主防災組織会長の菅原康雄さん(72)は「準備をしておけば、災害がいつ発生しても対応できるという自信になる」と話す。

地域住民が協力して防災に取り組む自主防災組織は、1959年の伊勢湾台風を機に誕生した。共助の重要性が注目された95年の阪神大震災後、災害対策基本法で育成が自治体の責務となった。昨年4月時点で全国に約16万7000団体あり、全世帯の8割以上をカバーする。

若いリーダー育成

だが、住民の高齢化などにより、町内会の役員がそのまま自主防災組織の役員を兼ねるだけといった形骸化が指摘される例も多い。災害リスクの高い地域では特に、活性化が急務となっている。

東北大災害科学国際研究所准教授(災害情報学)の佐藤翔輔さんは「活性化のためには、役員が災害リスクに応じた共助の必要性を再確認することが出発点」と助言。その上で、どんな活動に取り組むべきか、防災活動に詳しいNPO法人や大学教員など第三者から助言をもらうよう勧める。活発な自主防災組織の活動事例をホームページなどで調べてもいいという。

山形県天童市田鶴町地区の自主防災組織は、活性化に取り組んだ団体の一つ。2016年から仙台市福住町地区に活動内容を学び、公衆電話の場所などを記したマニュアルを作ったほか、要支援者を支える体制を整えた。

若い世代を活動に巻き込むことも大切だ。子どもが参加しやすいイベントを通じて、親にも防災に関心を持ってもらうといい。佐藤さんは「リーダー的存在を複数育てることが、組織の継続にもつながる」と話す。

災害対策基本法の改正で、14年に創設された「地区防災計画」制度を活用し、活性化を図ることも検討したい。住民自ら地域の防災活動について計画を作成でき、形式や内容は自由。独自の避難基準や安否確認のルールを設ける地域もある。兵庫県立大教授(防災計画学)の室崎益輝さんは「防災力を一段高めてくれるのが地区防災計画。形骸化した自主防災組織も中身が充実する」と指摘する。

滋賀県湖南市近江台地区の自主防災組織「ふるさと防災チーム」は、昨年度から作成を進めている。土砂災害の危険性が高いが、市が指定する避難所が遠いため、近くのゴルフ場などを一時的な避難場所にする独自のルールを決めた。市の担当者は「住民の防災意識が変化したのを感じる。組織がしっかりと動くようになった」と話す。

国や自治体が作成マニュアルを公開し、アドバイザーを派遣するなど支援に取り組んでおり、室崎さんは活用を勧める。「地域全体で防災について考えることができるプロセスを大事にしてほしい」と訴える。

◆防災組織活性化3か条
▽災害リスクを再確認
▽専門家から助言をもらう
▽防災計画の作成を検討

(読売新聞 2020年7月16日掲載)

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