地震・在宅避難(4) トイレ確保 命と尊厳守る (連載)

説明:◆熊本地震で避難生活の初期に困ったこと(複数回答、岡山さんの調査を基に作成)

大規模地震で断水すれば、自宅の水洗トイレは流せなくなる。マンションなどでは、排水管が破損して汚水が漏れていないか確認できるまで、時間を要することもある。

携帯型 洋式にかぶせて使用

大正大教授(環境学)の岡山朋子さんが、2016年の熊本地震の被災者に行った調査では、自宅や避難所での避難生活の初期に困ったこと(複数回答)として、「眠れる環境」(66%)に次いで「トイレ」(62%)が多かった。

7割以上が、地震発生後、6時間以内にトイレに行きたいと感じたが、自宅や避難所でいつもどおりに使用できたのは2割強にとどまった。「家の周りに穴を掘って済ませた」「近隣施設のトイレに朝から長時間並んだ」などの声が寄せられた。

トイレの回数を減らそうと水分補給や食事を控えると、エコノミークラス症候群や熱中症など健康面で悪影響が出る危険がある。NPO法人「日本トイレ研究所」(東京)代表理事の加藤篤さんは、「たかがトイレと軽く考える人がいるが、排せつできなければ命にも尊厳にも関わる」と指摘する。

携帯トイレ4人家族なら140枚

準備しておきたいのが、携帯トイレだ。洋式トイレに汚物袋などをかぶせて用を足すもので、袋内の排せつ物を凝固剤で固めたり、シートで吸水したりするタイプがある。「1日5回×1週間×家族の人数」分が目安で、4人家族なら140枚は備えておきたい。トイレットペーパーの予備もいる。同NPOがサイトで公開している「災害用トイレガイド」が、使い方などの参考になる。

用を足した後の携帯トイレは、臭いが気になる場合もある。クリロン化成(大阪)の「BOS(ボス)」は、独自技術で防臭性能を強化しており、臭いが漏れにくい。同社の担当者は「生ゴミを処分する時などにも使える」と話す。エクセルシア(東京)の「ほっ!トイレ」なども防臭力が高い。

携帯トイレがない場合は、新聞紙やキッチンペーパーをちぎって丸め、ポリ袋に入れれば代用できる。ただし、吸水性は低い。加藤さんは、「下水道管に直接流すマンホールトイレであれば、避難所などに早めに設営される。場所を事前に調べておくといい」と助言する。

ゴミの管理も気を付けたい。被害状況によっては、自治体のゴミ収集が長期にわたって滞る恐れがあるためだ。

大阪市は、地震発生の直後は人命救助を優先させるため、市が案内するまで、ゴミを自宅で保管するよう呼びかけている。収集再開のめどは、生活ゴミが3日以内、コンクリートくずなどの災害がれきは3週間後としている。

被災後すぐに、ゴミなどを自宅周辺や路上に出してしまうと、救助やライフライン復旧の妨げになることがある。「生活ゴミは地域の集積所などに、災害がれきは指定された仮置き場に持ち込むよう徹底してほしい」と同市。

災害への備えでは、水や食料の確保が優先され、トイレやゴミなどの衛生面は後回しにしがちだ。在宅避難のストレスを少しでも軽くできるよう、備えを見直したい。

◆トイレ3か条
▽排せつを我慢しない
▽携帯トイレを備える
▽マンホールトイレなども利用

(読売新聞 2020年9月19日掲載 「地震・在宅避難」おわり 生活部・崎長敬志、福島憲佑、梶彩夏、生活教育部・児玉圭太が担当しました)

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